お笑い芸人の田村淳さんがテレビ番組にて大学受験することを宣言し、偏差値32からの大学受験と名を打って、著名な予備校講師の指導を受けながら勉強されていたが、先ほど目標としていた青山学院大学の受験が悉く不合格に終わったと報道されていた。
ネット上ではこんなおちゃらけな大学受験は受験生に対して失礼だと、大叩きされていたが、結果はどの学部・受験方法においても全滅だったようだ。
大変失礼だが、中学校時代の、いや、それ以前の小学校レベルの基礎学力からしてどうだったのだろうと思う。
私も高校生の頃目標を失い、勉強することの意義も見いだせず、将来への希望も見いだせず、精神的に随分落ち込んでいたこともあって、2大学だけだったが受験に失敗して浪人した経験がある。
予備校へ申し込んで通ったが、その予備校のレベルについて行くことが出来ず、このままではダメだと思い、授業料を支払ってくれている親には申し訳なかったが、毎日京都北山にある府立資料館の自習室に籠り、高校一年生の段階から一人で勉強しなおした。
朝8時に家を出て、バイクで資料館へ行き、9時の開館を待って自習室で勉強し、夕方5時に閉館になってからは、バイクで岡崎の市立図書館へ行き、閉館になる8時50分まで毎日勉強を続けた。
ここまで自分を追い込んで勉強しだしたのは9月からだったので、翌年2月初旬の受験日まで5か月と少々であった。
浪人している友人たちとも殆ど遊ばずに、ごく一部の同じように資料館の自習室へきていた友人だけとしか会っていなかった。
もう50年以上前になるが、この時に勉強したことは私自身の基礎学力となり、今日市井の史学研究者(論文は発表しない)と自分でも言えるだけの礎になっている。
私の子供たちもそれなりに高校時代勉強を頑張っていたが、第一志望には見事に落ちてしまっている。偏差値が68~69もある高校で必死になって勉強してきても、著名大学(私学)にはそう簡単に受かる訳ではない。
私が高校生の頃には偏差値なんて言葉はなかったので、当時のレベルを数値化することは出来ないが、京大・阪大などの国公立に友人が受かっていたので、決してレベルは低くなかった。
京大を受験するには5教科7科目の勉強が必要だったので、私のような落ちこぼれではとても太刀打ちできなかった。同じような連中は最初から3科目と絞ってしまい、同志社・立命館へしか行かなかった。
落ちこぼれても一年浪人すれば、同志社若しくは立命館に合格するのは当然と思っていたし、浪人してまで同志社・立命館に受からなければ、とてもじゃないが親に合わせる顔がないと思っていた。
浪人したあとで受けた試験は同志社の経済学部は本当に良くできた。しかし、法学部は残念ながらとてもじゃないが合格点に達していないと思っていた。
立命館は経済学部だけしか受けなかったが、ここはもう楽勝だった。
合格発表日に勇んで大学へいったが、経済学部に私の名前が無かった。(当時は名前で張り出されていた) これはショックだった。絶対合格したと信じていたので、自宅へ帰り、父に報告したあとは、食事もほとんど食べられなかったと記憶している。
翌日が法学部の発表であったが、全く自信がなかったので、見に行くこともしていなかったが、父に言われて大学へいったら、なんと合格者の中に名前があった。
これは今日でもなぜ合格したのか不思議に思っている。
その後立命館の合格発表があって、これも合格していたが、同志社へゆくこととして、立命館は手続きをしなかった。
このように苦労して入学した大学であったが、3年生の初めから70年安保の大学紛争が一気に勢いを増し、大学はロックアウトされて授業を受けることが出来なくなってしまった。
試験はレポート提出だけとなり、3年生の頃より本格的に専門科目を勉強する予定が、全く狂ってしまい、私の大学卒業証書は勉強らしいことをした覚えがないままに、現在サイドボードの中に入っている。
今回の田村淳さんの青学受験おちゃらけ番組は、受験生を怒らせただけに終わったようだ。
青学のOBもほっとしたことだろう。こんな勉強で合格できるようでは青学の権威に拘わる。
本当に勉強して大学で学びたいのであれば、少なくとも2年は仕事をやめて、中学校の勉強からやり直すことが一番早道だと思う。
学歴コンプレックスを感じられることは多々あると思うが、それをクリアーするのは貴方自身の努力しかない。
私はこの30年ほど中世の日本史を研究しているが、漢文が読めなければ研究は出来ない。(送り仮名や訓点が付いていないもの) その漢文の基礎は高校時代に勉強した古文・漢文の授業だ。
大学受験は国語は必須であり、その中には古文・漢文の出題もあった。また、選択科目は日本史を選択した。それに向けて必死になって勉強したことが今の基礎になっている。(近年は漢文は出題されないそうだ)
古文書学の教科書を長年読み続けてきたので、今では時間をかければ、さらさらと書かれた古文書でも何とか読めるようになってきた。
基礎学力は一朝一夕に付くものではない。やはり弛まぬ努力をしないことには身につかない。
今回仮に合格出来ていたとしても、授業についてゆくには相当な努力が必要であり、淳さんの学力では教科書の意味を解釈することすら難しかったのではなかろうか。
私も大学の教科書に書かれている「蓋し」が判らず、びっくりしたことを覚えている。
現在でもそうだろうが、大審院の判例などは、明治期の書き言葉(文語体)なので、それを理解するには古文・漢文の基礎知識も必要になることがある。
ネットのニュースによると、来年も受験するとの意気込みが見えていないように感じる。このままで終われば、いくら一所懸命勉強してきたと言っても、それは証明されていない。
今回の青学受験番組は今後世間から叩かれるだろうが、今後は黙って受験勉強を続け、いつの日にか合格されることを願わずにはいられない。
努力すれば必ず報われる時が来る。何年受験しても合格しないかもしれないが、それは努力が足らないからで、それ以外の何物でもない。
淳さんが何年もかかって合格し、ちゃんと勉強して卒業すれば、世間に多くおられる高校落ちこぼれ組の社会人達の良いお手本となることだろう。
今回不合格になったことで諦めて大学受験を止めてしまえば、やはり偏差値32の落ちこぼれはこの程度なんだな~で終わってしまう。
ここは幼いお子様の為にも、おちゃらけ受験ではなく、部屋にはそれこそ「Z旗」を掲げ、一層の「奮励努力」を期待する。
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